大地X暮らし研究所
いのち本来のリジェネラティブなあり方を探求し、暮らしで実践していく
監督からのメッセージ
「君の根は大地再生にいどむ人びと」に寄せて
パメラ・タナー・ボル
気候変動は人類全体にとって、巨大で、恐ろしく、圧倒的な問題ですが、しかし、それが今では政治の問題とされ、人々の分断をひき起こしています。そして多くの人々は、中西部の洪水、カリフォルニアを襲う火災、海面上昇、気温上昇、氷河の融解といった悪いニュースから目を背けようとしています。
でも、もし解決策があるとしたらどうでしょう? 今すぐ身近にあり、誰にでも使える解決策。すでに試されてよい結果を出し、悪い副作用や悪影響、不測の事態を招かない解決策。
夢物語だと思われるでしょう?
多くの人々が化石燃料の排出を減らし、それへの依存から抜け出すために努力していることは間違いありません。でも、それだけでは気候のバランスを取り戻すには十分ではないのです。これまでの農業や牧畜が大きな問題であることがわかりましたが、悪いのは農業そのものではないし、牛そのものでもありません。問題は、これまでの農業や牧畜が、自然の資源をどのように扱ってきたか、なのです。
ご存知でしたか? 農地の土壌は劣化し、40年前と比べて、収穫量も栄養価も低下していることを? また、除草剤、殺虫剤、抗生物質の過剰使用は、摂取している植物や動物を通じて、私たち人間の健康に驚くべき悪影響を及ぼしていることを?
これらの問題を解決するのは、実はとても簡単なのです。なぜなら、その解決策は私たちの足元にある土の中にあるのですから。
地球の健康を回復させるために、私たちがすべきことは、熱を閉じ込め、水循環を妨げている大気中の過剰な二酸化炭素を、もとあった場所である土壌に戻すことです。それが、リジェネラティブ(=大地再生)と呼ばれるものです。カバークロップなどで土を覆うこと、耕さないこと、化学的な物質の投入を減らすこと、家畜を農場に呼び戻すことなどを軸とする農的な営みです。
このような単純な変化だけでも、私たちの土壌は洪水や干ばつに強いものになるでしょう。もし、世界中の農地で炭素濃度を2%上げることができれば、食糧問題は解決し、気候変動の問題も解決します。
その結果、より健康的な食べ物が豊富になり、もう、抗生物質や合成化学肥料もいらなくなるでしょう。私たちが効率性の名の下に世界中で展開してきた「工業的農業」はもはや機能していません。病気の家畜を生み出し、それがまた人間の病気を生み出すという悪循環に陥っているのです。
だから、みなさん、自然の力を信じ、その営みに任せようではありませんか。そして、大地再生のために、シンプルであると同時に深遠な営みを農場や牧場で繰り広げている仲間たちを応援しようではありませんか。
私たちの映画『君の根は。』の使命は、すでに大地再生農業を実践している名もなきヒーローたち、そして地球規模での気候危機の解決につながるような研究や企業活動に取り組んでいる科学者、企業人、そして市民団体のアクティビストたちの活動を紹介し、その意義を世界に知らしめること、そして、その成果を増幅させることです。
パメラ・タナー・ボル監督プロフィール:
アーティスト、映画制作者、作家、アクティビスト。出身校はミドルベリー大学、レズリー大学大学院。3人の息子の母親。Mystic Artists Film Productionsの創設者でありCEO。 アカデミー賞受賞作、ドキュメンタリー映画『Born into Brothels(邦題「未来を写した子どもたち」)』の共同製作者。制作した映画には他に、『Living in Emergency: True Stories of Doctors Without Borders(邦題「リビング・イン・イマージェンシー/国境なき医師団」)』、『Connected: A Declaration of Interdependence(「コネクティッドー相互依存の宣言)』などがある。
監督作には、母親でありアーティストでもある5人の女性を追った長編ドキュメンタリー映画「Who Does She Think She Is?(彼女は自分を何者だと思っている?)」、よりよい生き方を問う映画『A Small Good Thing(小さな、よきこと)』などがある。