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Blog:大地X暮らし研究所

執筆者の写真辻信一

気候緊急事態を議題とする特別党首討論を要請する

前日に引き続いて、デヴィッド・スズキが送ってくれた文章を訳したので、読んでほしい。それは、カナダ総選挙を間近に控えたカナダで、各界を代表する著名人たちが国会に提出した公開書簡である。これを、やはり、解散ー総選挙が近づく日本の文脈に置き換えたら、いったいどういうことになるのだろう。ぼくたちの民主主義が、そして想像力が問われている。

 

リーダーズ・ディベート委員会代表 

デヴィッド・ジョンストンさま


本日、私たちは、リーダーズ・ディベート(党首討論)委員会の代表であるあなたに申し上げます。私たち、以下の者は、全員がカナダ勲章を授与された者たちです。多くの社会的・経済的課題に直面しているカナダ人が、これらのテーマについて政治指導者たちがどのような立場をとるのかを知りたがるのは当然のことです。しかしながら、気候変動の危機は違います。この緊急事態は、巨大で緊急の存亡の危機に他なりません。それは、特殊の利害をもつグループの見解ではなく、今や確立された科学的事実です。国の舵とりを志す人々が、この危機の深刻さを理解しているかどうか、そしてそれに立ち向かうためにどのような計画を立てているのか、を評価する機会をカナダ人は必要としています。


先週の気候変動に関する政府間パネルの報告書が再び明らかにしたように、私たちにはほとんど時間が残されていません。もしもこの気候危機に対してすばやい行動をとらなければ、今後数十年のうちに、事態は悲惨なものとなるでしょう。つまり、多くの人にとって世界は破滅的なものに、そして他のすべての人にとっては深い不快感と混乱をもたらすものとなる。それはおそらく統治不可能な世界でしょう。私たちの目の前にあるのは、生態系の危機だけではありません。同時に、人間としての危機、社会正義を、文明全体を、そして私たちの種の存続そのものを危うくする脅威なのです。


あなたと同じように、この手紙をお送りしている私たちも高齢者です。あなたには14人のお孫さんがいますが、私たちの大半もまた祖父母です。私たちの孫や子供たちの未来は、今、深刻な危機に瀕しています。実は、私たち高齢者に残された年月でさえ、危険から自由ではありません。たとえ裕福な者であっても、熱帯の島々や温暖な気候での優雅な引退生活などありえません。島々は洪水に見舞われ、温暖な気候は今や灼熱にとってかわられているのですから。やがて海が死ねば、私たちのような酸素を呼吸する中型陸生哺乳類もすべて死滅するしかありません。


もしこれが第二次世界大戦中の選挙だったら、その戦争を議題として党首討論を行う必要性を疑問視する人はいないだろう。今日、気候変動の緊急事態に関する特別な党首討論が必要なのも、それと同じです。これは贅沢でもなければ、気晴らしでもありません。必要なことなのです。次期国政選挙への立候補を予定する人たちは、カナダにとって、いや、世界の未来にとって決定的に重要となる4年間に行使すべき政治的権限を求めています。その数年間が私たちの運命を決めるのです。カナダ国民は、この最も緊急性の高い問題について、政治指導者たちの意見を聞き、彼らが問題の解決に向けた政策をしっかりと議論するのを見届ける時間を必要としています。


もしご希望であれば、私たちは喜んでこの問題についてあなたと話し合うつもりです。早急なご検討をお願いいたします。


2021年8月16日

マーガレット・アトウッド、スティーヴン・ルイス、マイケル・オンダーチェ、デヴィッド・スズキ



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